解説

「田中幸夫監督コメント」

2016年の春、拙作「凍蝶圖鑑」(2014)を観たという

大学生が、私に映画製作の話を持ち込んで来た。

今回の映画の主人公となった未悠(みゆ)だ。

 

未悠は子どもの頃から心と体の違和に苦しんできた。

「来年の春休みに性別適合手術をする予定です。

是非、私を撮ってほしい!」と言う。

男の体をもちながら女の心をもつ未悠・・・。

「私のような子を応援していきたい!」

強い覚悟に押されるように撮影に入った。

忌避、蔑み、偏見、差別の渦巻く中、

未悠はあっけらかんと生きていく。

未悠の生き方に共感する人たちも声をあげ始めている。

 

ドキュメンタリー映画は覚醒するためにある。

感動や怒りや不幸の底上げ大安売りの時代、

「女になる」はフラットだからこそのリアルに徹した。

明るく楽しくバカバカしく、

ちょっと真面目に生きる未悠たち。

 

映画を通して

多様性を認め合う社会の萌芽を

少しだけ刻印できたのではないかと思っている。